著者がTeXを使って執筆した原稿を、DTPなどTeX以外のシステムで組み直さなければならないケースは多くあると思います。その際「TeXで作られたデータからどうやってテキストや図版を取り出せばよいのか……」と頭を悩ませた経験のある編集者の方も多いのではないでしょうか。
以前TeXのデータからテキストを取り出す方法をご紹介しましたが、今回は図版を取り出す方法です。
この文書が、TeXになじみのない方がTeX原稿を取り扱う際の指針となれば、幸いです。
TeXの図版は大きく2種類に分けられる
TeXの図版は、リンク図版とTeXコマンドによる図版の2つに大別できます。
- リンク図版……文書から外部の画像ファイルにリンクを張って取り込む方式
- TeXコマンドによる図版……文書内に図形を描画するコマンドを記述する方式
リンク図版はDTP文書やHTML文書などでおなじみの方式かと思います。コマンドの組合せで図形を描画する方式はTeXらしい難解に見えるものですが、この方式で非常に精巧な図版を作ってこられる著者も多数いらっしゃいます。
図版を取り出す際の基本方針は下記のようになります。
- リンク図版……対応する画像ファイルを見つけ出して一般的なDTPツールで編集・再保存
- TeXコマンドによる図版……TeX文書をコンパイルし、できたPDFから図形を抽出
リンク図版
文書本体とは別に個々の画像ファイルを用意し、文書本体からその画像を呼び出す方式。InDesignやQuarkXpressなどのDTPソフトと同じ方式です。
TeXでよく使われる画像形式としては EPS, PDF, JPEG, PNG, BMPなどがあげられます。
EPSやPDFのようなベクトルデータならばIllustrator、JPEG, PNG, BMPのようなビットマップデータであればPhotoshop、という風に適切なツールで編集し、再利用するという流れになります。
文書のどこでどの画像ファイルが使われているのかは、文書ファイル(.tex)の中を見ると突き止めることができます。
例えば下のリストでは「サモトラケのニケ」というキャプションの付いた図版に対応する画像ファイルは「nike.eps」である、ということが読み取れます。
\begin{figure} \includegraphics{nike.eps} \caption{サモトラケのニケ} \end{figure}
TeXのコマンドで作られた図版
文書本体の中に直接、描画コマンドを記述して作図する方式 [1] 。文書ファイルをコンパイルすると図形があらわれます。
たとえば下のリストをコンパイルすると
一例として、ぐにょぐにょ矢印があげられる。\\ \begin{tikzpicture}[x=1mm,y=1mm] \draw[line width=2pt,rounded corners=8pt, ->] (0,5)--(5,0)--(10,5)--(15,0)--(20,5); \end{tikzpicture}\\ この図形の先端には…
両者を突き合わせて見ていくと、\begin{tikzpicture}から\end{tikzpicture}の間に記述されているコマンドが図形に変化したことがお分かりいただけるはずです。
この方式の場合は、コンパイル結果のPDFをIllustrator等のツールで開き、図形を取り出すのがよいのではないかと思います。
参考文献
[改訂第6版]LaTeX2ε美文書作成入門
- 描画コマンドには、METAPOST, Asympntote, PSTricks, TikZなど様々な方式があり、これらコマンド体系の全貌を理解することはかなり難しいと思われます。 [↩]