奥付まで含めて全部で104ページのコンパクトな本。左側にイラスト、右側にテキストを配置した見開き構成となっていて、ページを繰っていくうちに欧文組版のエッセンスが身体にしみ込むように入ってくる、ふしぎな本です。
私たちは文字をどう読み、その文字はどのようなはたらきをしているのか──この2つを知ることで、文章の組み方の全体像がよく見えてきます。(p.45)
――たとえばこんな一文から垣間見られるように、この本ではただ単に欧文の組版ルールを並べて解説するだけではなく、どこに気をつけるべきか、なぜそうすべきなのかという理由を、読むときの目の動きや映像の把握の仕方、視野の問題なども交えて、原理的に解き明かしてくれます。文章も明晰な語り口で必要なことを的確に伝えてくれます。
私たちの普段携わっている日本語組版は単語の分かち書きがなかったり縦組だったり…と、欧文組版とはかなり異なる世界ですから、この本で語られている内容がダイレクトに仕事に反映されるということはないと思います。ですが「組版者の役割」や組版における空白のとらえ方、「テンポ」など、基調をなす考え方には共通するものも多いと思います。「欧文組版でそうだとすると、じゃあ日本語組版ではどうなるんだろう?」と考えを発展させてみるのも面白いかもしれません。
本としてのたたずまいもよく [1] 、あたたかいイラストと組版の織りなす詩的な雰囲気。著者も「イラストだけを見る(私なら、まずここからはじめます)、本文だけを読む、本文とイラストの両方を見る」と3通りの読み方を提案しています。絵本を読むような感覚で折にふれ読み返してみたいと思います。
原著:Inside Paragraphs Typographic Fundamentals http://insideparagraphs.com/
【目次】
はじめに
文字のはたらき
グーテンベルクのアイデア
カウンター
字間
行間
グリフスペース
活字「読む」ということ
単語
「読む」とは
想像してみる
視野
文字サイズ
スペーシング
組版者の役割字間
均等スペーシング
カーニング
トラッキング
見出しと本文
小さい文字とオールキャップス(大文字だけの表記)
控えめな調整単語間と行間
単語間
行間
行送りベタ
行送りの拡大
行間と読みやすさ
段落の設定
空白の階層
テンポ
コラム幅(組幅)
広いコラム
狭いコラム
微調整
ハイフネーション
頭揃え
箱組
ジャスティフィケーション
最小・最適・最大
ハイフネーションとジャスティフィケーションの方針
おわりに
監修者あとがき
- カラーリングを見て「くまモン?」ってつぶやいたのは私だけではないと思いますが… [↩]