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英語の文章では、文の最初の単語の最初の文字や、固有名詞の最初の文字などが大文字になります。しかし書籍や論文などの「タイトル」においてはそれだけではありません。学術書の参考文献欄などをみればすぐに気が付かれると思います。普通の文章では大文字にならないはずの単語の一文字目などが、大文字になっているのです(その参考文献欄ではイタリック体や引用符なども使われていると思いますが、それには今回は触れません)。これはなんなのでしょうか。その書籍や雑誌などのなかで統一が取れていればよいとは思うものの、基準がよくわからない。なにかルールがあるのではないか、という思いを持ってシカゴルールとオックスフォードルールにあたってみました(シカゴルールはThe Chicago Manual of Style 16版、オックスフォードルールはNew Hart’s Rules)。

まず表紙や扉などはルールの外となるようです。それは洋書の表紙などを眺めてみると、すべての文字が大文字で組まれていたりする(例えばこんな風に)ことからも分かります。そして本文中などでのタイトルの扱いについては、詳しくはそれぞれのルールブックに一応項目が立っているのでみていただきたいのですが、簡単には次のようになります。

シカゴルールでは「ヘッドラインスタイル」と「センテンススタイル」という二つの「スタイル」を示していて、詳細に記述しています。ふつう使われるという「ヘッドラインスタイル」の定義は(p. 448)、「タイトルとサブタイトルの最初と最後の単語は大文字で始めること」「そしてすべての他の主要な単語を大文字で始めること(名詞、代名詞、動詞、形容詞、副詞、そしていくつかの接続詞)」から始まり、7項目に及びます。

*The house of Rothschild: The world’s banker, 1849-1999(センテンススタイル)
*The House of Rothschild: The World’s Banker, 1849-1999(ヘッドラインスタイル)

一方でオックスフォードルールにはそれほど厳密な決まりはないようです。そこでは「厳密に特定のタイトルでどの単語が大文字から始められるかは、個々の判断の問題であり、それにはタイトルの意味、強調、構造、長さが考慮に入れられるだろう(p. 133)」と述べられます。タイトルの長さによっても状況は変わるとされています。

こうしてみてみるとシカゴルールは厳密な方針を示しているものの、英語圏で統一的な規則、というようなものはないようです。

では我々はこの英文におけるタイトルの扱いについて、どのように考えていけばよいのでしょうか。論文の英文タイトルや参考文献欄の大文字使用について、こうでなければならないというものはないものの、その書籍なり雑誌なりのなかではやはり方針はあったほうがいい。執筆要項にある執筆例などを見る際、論文のページ数や年の記載の順番や形式も大切ですが、その大文字使用にも注意を払いたいものです。シカゴルールでいう「ヘッドラインスタイル」と「センテンススタイル」が混在するのは、やはり体裁(と言えるかどうか分かりませんが)として美しくないように思います。