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デザインに役立つスマートフォンアプリを不定期でご紹介するこのコーナーですが、今回は欧文活字の歴史を旅するゲーム Type:Rider をご紹介しましょう。

トレイラームービーの詩的な世界観にノックアウトされてしまいました……。

そして実際にiPhone版で遊んでみました。これは、ホントにとてもよくできてます。

活字世界の旅はこんな場面からスタート。ロゴの真ん中にいるコロン(●●)がこのゲームの主人公です。ちなみに、ロゴにタイプライター書体が使われているのは、タイトルにかけてのことでしょうか?
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このような荒野をころころ行きますと…
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ステージの入り口がありまして、各歴史年代の活字の世界に誘われます。
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例えばグーテンベルクの世界。右側にある白いアスタリスクのようなものに触れると
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カギがひとつ開いて……
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その項の解説文を読むことができるようになります。
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活字の森を通り抜け
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熱く溶けた鉛の脇をやりすごし
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何やら神々しい光景の中に突入
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さらに活版印刷機の下をつぶされないように進み
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四十二行聖書の段間を下っていくと……
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ステージのゴールに辿り着きました。これで、次のステージへの扉が開きます。
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――こんな感じで、先史時代から現代のデジタルフォントまで、全部で10のステージが用意されています。
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このゲームの秀逸なのは、ただ美麗なグラフィックでできた活字の森を歩かせるだけではなく、BGMやパズル的なギミックを総動員してその欧文活字が生まれた時代の世界観を伝えている点にあるように感じます。

 

たとえば18世紀フランスの著名な出版者で書体制作も手がけたディドーのステージでは、蒸気機関をモチーフにしたパズルが登場します。
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そして、ごく初期型のクラリネットからは煙と音符が立ち昇り、BGMでもクラリネットの音色が基調をなしています。
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そういえば世に生まれて間もないクラリネットをたいへん愛したモーツァルトは、実は産業革命の真っ只中に生きた人でした。ほぼ同時代のディドーやボドニーのモダン・ローマン開発にも、新たな世界を切り拓いた進歩的な空気が反映されているのかしら、などなど、欧文活字を生み出した世界に対する想像がふくらんでいきます。

 

そんな筆者の考察があたっているかどうかはさておき。
――こういう文化教養的な要素を盛り込んだゲームは、ゲームとしても電子書籍としても中途半端になりがちな印象がありますが、このType:Riderはゲームとしての完成度も高く、満足のいく仕上がりになっていると思います。
美しく詩的なグラフィックとほどよいゲームバランスの中で欧文活字と戯れているうちに、色々な書体の特徴的な部分を何度もなぞることになりますし、遊びながら知らず知らずのうちにフォント博士になっている自分に気づく、かもしれません。

Type:Riderは、iPhone, Android 両対応です。2013年10月現在の販売価格は250円となっています。

http://typerider.arte.tv/